銘柄研究:目黒区ホステル第1号ファンド第1回

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オーナーズブックの案件【目黒区ホステル】考察

ソーシャルレンディングで特定の不動産を担保にする場合、その不動産の住所等は公開されないことになっています。

しかし、公開情報と地図をじっくりと眺めますと、「これかな?」という物件を見つけることが可能です。

そこで、今回はオーナーズブックの案件「目黒区ホステル第1号ファンド第1回」について、投資の妥当性等を考察します。

オーナーズブックの公開情報から物件を探す

「目黒区ホステル第1号ファンド第1回」では、2つの物件を担保にして資金を貸し出します。

文京区のマンションは10万円しかありませんので、1億円を貸しているホテルだけ考えます。

オーナーズブックのホームページから得られる主なホテル情報は、以下の通りです。

所在地目黒区青葉台
用途ホステル
建物1階から5階までがホステル、6階と7階は住居
ホテルベッド数98
建築年1985年7月

この条件に当てはまるホステルを検索すると、1つ見つかりました。「WISE OWL HOSTELS SHIBUYA」です。

→ WISE OWL HOSTELS SHIBUYAホームページ

ただし、インターネット経由では、建築年までは確認できませんでした。Google mapを使って建物を見ると、建築年が書いてあることがあります。それを期待して調べましたが、書いてありませんでした。

今回の担保物件がこのホテルと異なるとしても、これと似たような物件だと想定できます。そこで、この物件の価値を考察しましょう。

銀行からの借入6億円と、オーナーズブックからの借入1億円の合計7億円を、借主が返済できないとします。この場合、この物件で7億円を回収できるでしょうか。

なお、このホテルの概要は、以下の通りです(FASHIONSNAP.comから引用)。

敷地面積:189.84㎡
建築面積:133.25㎡
延床面積:815.34㎡
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造

建物の価値はどれくらい?

では、このホステルが入居しているビルの価値を確認しましょう。こういったビルの規模になりますと、インターネット上に情報がなかなかありません。

そこで、国土交通省の「土地総合情報システム」で検索しました。そのものズバリの取引物件はないわけですが、参考になる取引例がありました。

・所在地:目黒区青葉台
・地域:住宅地
・取引面積:400㎡
・坪単価:320万円(1㎡あたり98万円)

・所在地:目黒区青葉台
・地域:商業地
・取引面積:100㎡
・坪単価:400万円(1㎡あたり120万円)

面積が広い方は住宅地です。商業地の方は、面積が狭いです。しかし、ホステルの立地を考え、坪単価400万円を採用することにします。

今回考えているホステルの面積は189.84㎡ですので、土地だけの価格は2億2,780万円となりました。

これに、ビルの価値を追加することになります。収益性を考えずに建物だけとして考えれば、数億円かな、という大雑把な予想が立ちます。正確な評価は無理なので、大雑把です。

すると、土地建物の合計で5億円前後?になります。今回、この不動産を所有している会社は、銀行とオーナーズブックから合計7億円借ります。

もしかして、貸しすぎ?という不安が出てきますが、この試算には不足があります。それは、不動産(ホステル)の収益力です。

ホステルの収益力

オーナーズブックの公開情報によると、今回資金を借りる会社は、不動産から以下の収入を得ています。

ホステル部分:

固定賃料:坪単価16,300円程度
売上連動賃料:坪単価3,400円程度

住居部分:

賃料:月額10,200円程度

また、ホステルの平均ベッド単価は3,500円で、ベッド稼働率は90%と高率を誇ります。

ホステル部分の延床面積は、815.34㎡ですから、およそ247坪です。すなわち、毎月の賃料は(16,300円+3,400円)×247坪=487万円くらいです。

住居部分の面積は不明ですが、1階から5階までが247坪なので、単純計算で99坪としましょう。すると、住居部分の月額賃料は10,200円×99坪=101万円くらいです。

すなわち、月額家賃合計は588万円くらいということになります。ということは、年間の収入は7,056万円くらいということになります。

・土地と不動産の価格(収益力を無視した大雑把な計算):5億円前後?
・年間賃料:7,000万円くらい?

この試算がそもそも正しいかどうかという問題もありますが、インターネットで簡単に集められる範囲で試算すると、以上の通りになりました。

税金等を考慮しなければ、10年間で7億円を返済可能です。

外部専門家の評価額と、実際の貸出額

オーナーズブックによると、資産評価額は8億8,200万円です。借入額合計は7億円ですから、評価額に対する貸し出しの割合は79.4%ということになります。

資金を借りた企業が返済に行き詰まる場合、不動産を売却することになります。しかし、急いで売却することになるので、安値で売らざるを得ないかもしれません。

その結果、評価額の80%未満で売却することになれば、投資家は損してしまいます。

しかし、ホステルの収益力が魅力的です。訪日外国人数は増加傾向ですし、稼働率は90%に達しています。よって、高値で売れる可能性もあります。

こうして、自分で試算した結果と、オーナーズブックの公開情報を照らし合わせながら、投資可否を決めます(試算結果は不確実性が高いので、参考程度の扱いになります)。

ソーシャルレンディングの不動産案件は、不動産の具体的な住所等が不明です。しかし、ぼんやりとして不正確ながらも、以上の通り自分で試算することが可能です。可能な範囲で試算して、納得したうえで投資しましょう。