債券投資とソーシャルレンディングは、とても似ています。しかし、その仕組みは大きく異なります。そこで、どの点が似ていて、どの点が異なるのか、確認しましょう。
債券とは、一言で書けば借用書です。国や企業などが借用書(債券)を発行し、私たちはその債券を買います。すると、その債券に書いてある条件に従って、定期的に利子をもらったり、期限が来れば元本を受け取ったります。
上の図は、ソーシャルレンディングと債券投資の概要図ですが、その差が良く分かりません。そこで、大きく異なる点について、確認していきましょう。
相違点1:どこで買うか
債券:証券会社
ソーシャルレンディング:ソーシャルレンディング事業者
ある企業が債券を発行する場合、証券会社経由で発行します。よって、私たちは、証券会社で債券を買います。証券会社では、ソーシャルレンディングを取り扱っていません。
また、特定の企業の債券を買いたいという場合、どの証券会社でも買えるというわけではありません。そこで、買いたい債券を販売している証券会社で買います。
手数料を既に含んだ価格で販売しますので、手数料を別途支払う必要はありません。よって、証券会社に支払う手数料がいくらなのか、見えづらくなっています。
ソーシャルレンディングの案件に投資したい場合は、ソーシャルレンディング事業者で買います。事業者ごとに販売している案件が異なります。よって、私たちは、それぞれの事業者で案件を選んで投資します。
手数料不要なのは、債券の場合と同じです。ただし、ソーシャルレンディング事業者が受け取る手数料率がいくらなのか、比較的分かりやすいです。
相違点2:証券会社やソーシャルレンディング事業者が倒産する場合
債券:影響なし
ソーシャルレンディング:資金がどれだけ返還されるか不明
私たちは、証券会社経由で債券を買います。では、その証券会社が倒産したらどうなるでしょう?答えは、「債券の権利や義務関係に何の影響もない」です。
と言いますのは、証券会社経由で買った債券は、証券保管振替機構(ほふり)で別途保管されるからです。証券会社が倒産しても、私たちの債券は守られます。
ただし、債券発行企業が経営破たん状態になると、元本の償還は難しいかもしれません。これは、ソーシャルレンディングの場合も同様です。
一方、ソーシャルレンディング事業者が倒産またはそれに近い状態になるとき、私たちのお金がどれだけ戻るか、分かりません。
債券投資の場合、私たちは証券会社を経由しただけです。一方、ソーシャルレンディングの場合は、ソーシャルレンディング事業者が組織した匿名組合に出資する形式です。このため、事業者が倒産してしまうと、資金がどれだけ戻るのか分かりません。
相違点3:誰にお金を貸しているか
債券:誰に貸しているのか、分かる
ソーシャルレンディング:貸付相手が分からない
債券投資の場合、私たちはどの企業にお金を貸しているのか分かります。一方、ソーシャルレンディングの場合は、ほぼ分かりません。
ただし、不動産関連のソーシャルレンディング案件ならば、ぼんやりと分かることがあります。貸付対象の不動産が存在する都市名や面積、貸出額が公表されることがあるからです。その情報を頼りに、地図等で調べることができます。
とはいえ、情報公開のレベルは債券投資の方が圧倒的に高いです。
これは、ソーシャルレンディングを規制する法律が原因です。ソーシャルレンディング事業者は、法律が認める範囲で、少しでも多くの情報を公開しようと努力しています(より多くの情報を公開する方が、投資家が安心してお金を出してくれます)。
よって、案件に関する情報公開がどの程度進むかについては、法律次第です。
相違点4:中途売却
債券:中途売却できる
ソーシャルレンディング:中途売却できない
債券の場合、取引所があります。取引所がない場合は、販売している証券会社に売却可能です。このため、途中で換金する必要がある場合は、売却可能です。
しかし、証券会社に売却する場合、売却価格に手数料相当額が含まれています。この金額が大きいので、債券を積極的に売買して利益を得るのには向きません。
取引所で売買できる転換社債などを除き、基本的には、満期まで保有するのが債券投資の基本になるでしょう。
一方、ソーシャルレンディングの場合は、基本的に中途売却ができません。ソーシャルレンディングは、満期までの期間が数か月から1年くらいの案件が大半です。そこで、途中で換金が必要になるかも?という資金で投資しないことが重要です。
少なくとも1年間は使う予定がない、という資金を使って投資しましょう。
特徴5:安全度を考えるためのデータ
債券:多数
ソーシャルレンディング:わずか
債券を発行する場合、発行企業は数多くの情報を公開します。また、格付機関から格付を取得することも多いです。
格付とは、債券投資に詳しくない人でも簡単に分かるよう、債券発行企業等の安全度をアルファベットで表現するものです。
例えば、日本格付研究所の定義は、以下の通りです
格付 | 定義 |
---|---|
AAA | 債務履行の確実性が最も高い。 |
AA | 債務履行の確実性は非常に高い。 |
A | 債務履行の確実性は高い。 |
BBB | 債務履行の確実性は認められるが、上位等級に比べて、将来債務履行の確実性が低下する可能性がある。 |
BB | 債務履行に当面問題はないが、将来まで確実であるとは言えない。 |
B | 債務履行の確実性に乏しく、懸念される要素がある。 |
CCC | 現在においても不安な要素があり、債務不履行に陥る危険性がある。 |
CC | 債務不履行に陥る危険性が高い。 |
C | 債務不履行に陥る危険性が極めて高い。 |
あれやこれやと書いてありますが、BBB以上であれば、投資適格等級だと判断されます。BB以下だと、リスクが高いと判定されます。
以上の通り、債券については、投資したお金が無事に戻るかどうかを考えるためのデータが豊富です。
一方、ソーシャルレンディングの場合は、検討する材料がほとんどありません。このため、ソーシャルレンディング事業者が適切に審査していると期待するほかありません。
特徴6:利率
債券:低い
ソーシャルレンディング:高い
実際に投資した場合に得られる収益は、ソーシャルレンディングの方が大幅に高いです。
と言いますのは、債券を発行できる企業は、大企業が多いです。信用力が高いので、デフォルト(資金返済できないこと)の可能性が低くなります。また、国債の利率を基準にして、債券の利率を決めます。
現在のような、金利が極端に低い状況では、債券の利率も低くなります。
一方、ソーシャルレンディングの場合は、大企業でなく中小企業が資金を借りる場合が多いでしょう。資金を借りる企業の情報は公開されませんが、ソーシャルレンディング案件の資金規模や、資金返済が滞ったときの状況を見ますと、中小企業ばかりのように見えます。
すなわち、大企業に比べてデフォルトになる確率が高くなります。
この場合、返済が滞っても、抵当権を付けた不動産を売却することにより、投資資金を回収できると期待できます。
よって、できるだけ金利が高く、かつ、第1順位の抵当権が付いているような、安全度が高めの投資案件を探したいです。
債券投資をすれば、利率は低いですが安全度の高い投資ができます。
そこで、ソーシャルレンディングで稼いだら、その資金をただ寝かせるのでなく、債券投資で少しずつ成長させるという案を検討できます。
この際に重要なのが、証券会社選びです。と言いますのは、証券会社ごとに販売している債券の種類が異なるからです。
多数の債券を販売しているのは、SBI証券です。国内債のみならず、外国債券まで広く揃えています。
次のページでは、ソーシャルレンディングとFX(外国為替証拠金取引)を比較します。