ソーシャルレンディングのホームページで投資先を見ると、不動産が比較的多いです。
では、不動産を直接買って投資する場合と、ソーシャルレンディングで不動産に投資する場合で、どちらが有利でしょうか。
人口問題を踏まえつつ、長期的な視点で考察します。
不動産に直接投資して稼ぐには、2つのパターンがあります。
いずれの場合も、不動産を必要としている人が、お金を出してくれます。そのお金が収入になります。ということは、不動産を必要とする人がいなければ、収入になりません。
そこで、日本の将来の人口予想を確認しましょう。人は、必ずどこかに住みます。すなわち、人口が多ければ多いほど、不動産が必要になります。人口が増えれば、不動産価格は上昇するでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所からデータを引用し、グラフ化しました。
上のグラフを見れば、日本の人口推移は明らかです。大幅に減ります。
2010年前後の時点で、日本は1億2,000万人以上の人口でした。しかし、その後は減り続け、2065年には、9,000万人を割り込むと予想されています。
数十%という単位で、人口が減ってしまうのです。
毎年、数十万人以上の規模で減少します。すなわち、中規模の都市が毎年消滅しているのと同じです。
ただし、将来の予想は、不確実性が伴います。よって、人口予想も外れる可能性があります。しかし、今20歳の人口が100万人いるとしましょう。そして、10年後、30歳になったときに105万人に増えることはないでしょう。
病気や事故などがありますので、人口はいくらか減っているはずです。その意味で、人口予想は外れにくい予想だと言えます。
総人口推移を見ると、日本の不動産業界の将来は厳しいと予想できます。
人口の内訳
次に、人口の年齢別内訳を確認しましょう。こちらも、社会保障・人口問題研究所からの引用です。
2020年の人口予想:
前期老年人口(65歳~75歳)が多いですが、40歳代の人口も多いことが分かります。そして、15歳以下の人口が少なすぎることも分かります。
2050年の人口予想:
老年人口が、かなりの割合を占めています。老年人口を支えようと思うと、現役世代の人口は足りないかもしれません。
今、現役の皆様は、老後になったら現役に支えてもらえない可能性を考えなければならないでしょう。すなわち、自分で自分を経済的に支えるということです。
さて、2020年と2050年をざっくりと比較しますと、以下のことが分かります。
不動産を必要とする人は、高齢者でなく生産年齢人口に属する人でしょう。高齢者の場合、老人ホームに入居したり、自分の子の家に住んだりする例が増えます。すなわち、不動産の需要は減ると考えられます。
日本の人口は減る一方、そして、人口の内訳を見ると、不動産を必要とする人も減る一方です。
すなわち、不動産に対してお金を支払ってくれる人が減ります。不動産を必要とする人が減れば、賃料や不動産価格は下落しやすくなります。不動産に投資するのは、かなり厳しいと予想できます。
ただし、人口が集中する東京都区部は、様相が異なる可能性があります。よって、人口が減る中でも、特定の地域ならば不動産投資は有効かもしれません。
以上を踏まえて、不動産投資の失敗シミュレーションをしてみましょう。
不動産投資をすると決めて、数千万円~数億円かけて、土地と建物を取得しました。建物は新築です。よって、賃料は高めに設定できますし、入居者集めも比較的順調に進みました。
しかし、築5年~10年すると、雲行きが怪しくなり始めました。
既に新築とは言えないので、賃料は下がり気味です。入居者集めにも苦労するようになります。人口が減りつつあり、入居希望者自体が減っているからです。
しかし、不動産ですから、簡単に換金できません。換金できるとしても、入居者集めに苦労する物件です。赤字覚悟の投げ売りになるかもしれません。
赤字は困るので、賃貸経営を続けることになります。築15年、20年、25年と続くと、状況はさらに悪化します。収入確保に困る一方で、修繕費と税金は毎年必要です。
結局、投資というよりは不動産経営に奔走することになり、いつも心の片隅で不安を抱える状態になりました。
この状況を劇的に変えうるのは、日本の移民政策です。移民を数多く受け入れる方針になれば、人口の減少が緩やかになるからです。
現在の東京都心を歩くと、外国人が極めて多いことが分かります。旅行者も多いでしょうが、一定期間住んでいるという外国人も多いでしょう。彼らの存在が、日本の不動産業界にとって救いになるかもしれません。
しかし、移民増加は、別の問題を引き起こすでしょう。また、政策は自分で決められません。移民政策に期待すると、運の要素が大きくなります。その分、リスクも高いです。
では、ソーシャルレンディングで不動産案件に投資するのも、リスクが高いでしょうか。一概にリスクが高いとは言えません。以下の理由があるからです。
ソーシャルレンディングの場合、1万円や数万円といった少額資金から参加できます。数千万円~数億円の資金は必要でありません。
そこで、小口資金で分散して投資すれば、リスクを分散できます。小口資金ならば、ダメージを受けても回復可能です。借金して数千万円以上借りたけれど失敗、という場合に比べると、余裕です。
ソーシャルレンディングで資金を貸す期間は、半年から1年半程度が多いです。一方、今まで見てきた人口推移は、数十年という長期です。
数十年で見ると、人口減少は大変な数字です。しかし、1年前後の投資期間です。1年の間に劇的に人口が減ってしまい、それが原因となって事業が失敗するという可能性は、低いのではないでしょうか。
また、ソーシャルレンディングで資金を貸す場合、借りる企業は、不動産評価額の7割~8割を限度として資金を借ります。
事業に行き詰って返済が滞れば、その不動産を売却して資金を回収できます。評価額の7割~8割を上限として貸しますので、投資資金が全然戻ってこないというの例は考えにくいのでは?と予想できます。
不動産は、個別性がとても大きいです。隣り合わせの土地でも、土地に接した道路の広さや日当たりなど、様々な要因で価格が大きく変わります。
こういった調査は、専門家でないと困難です。一般的には、そこまで気合を入れて投資しようという人は少ないと思います。そういう難しい調査は業者にやってもらって、自分は資金を提供するだけでOKです。
こうしてみると、あたかもソーシャルレンディングの方が優秀のように見えます。しかし、ソーシャルレンディングにもデメリットがあります。また、不動産を直接買うメリットも、もちろんあります。
ソーシャルレンディングにおいて最も重要なのは、「投資したお金が、無事に戻ってくるかどうか?」です。
そこで、ソーシャルレンディングで資金を出す場合は、どの事業者に投資するかが重要になります。
そして、どこか1つの業者に集中するのではなく、万が一を想定して、複数の業者で取引するべきでしょう。ある業者で事件・事故が発生しても、他の業者で挽回するということです。
また、資金を投入する時期の分散も重要かもしれません。特定の時期に、投資可能資金を全額投入したとしましょう。その時に天災等があると、分散投資していても、ダメージを受けるかもしれません。
業者の分散と、時期の分散に気を付けましょう。
次のページでは、ソーシャルレンディングとREIT(不動産投資信託)を比較します。