ソーシャルレンディングの事業者サイトをいくつも見て回ると、不動産関係の案件が多いことに気づきます。不動産に抵当権を付けられることが理由かもしれません(不動産をあまり扱わない業者もあります)。
そして、REITとは、不動産投資信託のことです。
では、不動産関連を対象とするこの2つの投資は、どのように違い、どのように同じでしょうか。概要を確認しましょう。
最初に、REIT(不動産投資信託)を確認しましょう。ソーシャルレンディングと比較しやすいように考えます。下の画像は、投資信託協会ホームページからの引用です。日本のREITなので、J-REITと書いてあります。
本当は、REITに関係する機関はもっとたくさんあります。しかし、ざっくり説明すると、上の図の通りになります。
私たちは、J-REITに投資します。J-REITは、投資家から集めた資金と、銀行から借りた資金などを使って、不動産を買います。その不動産を運用して、賃貸収入を得ます。あるいは、不動産を売却して収益を得ます。
J-REITは、その収益を投資家に分配します。
下の図は、ソーシャルレンディングの概要図です。ソーシャルレンディングの場合も、下の3つの当事者のほかに、いくつか関係者が出てきます。しかし、基本的な仕組みは下の通りです。
私たち投資家は、事業者に資金を出します。事業者は、その資金を誰かに貸します。借りた人は、契約に従って元本と利子を事業者に返金します。そして、私たちはそこから収益を得るという構図です。
図で見る限り、REITとソーシャルレンディングは同じようなビジネスに見えます。しかし、実際は大きく異なります。そこで、私たち投資家から見た主な違いを確認しましょう。
REITとソーシャルレンディングでは、投資対象が異なります。
REIT:不動産そのものを買う
ソーシャルレンディング:資金を借りたい人に、お金を貸す
REITは、不動産を買い、誰かに貸して賃貸収入を得ます。あるいは、価格が上昇したところで売却して利益を得ます。一方、ソーシャルレンディングの場合、借りた人が確実に返済するように、注意監督します。
同じ不動産関連といっても、投資対象は大きく異なります。どちらが容易でどちらが難しいということはないでしょうが、必要とされる能力はそれぞれ異なることが分かります。
REIT(不動産投資信託)は、取引所に上場しています。すなわち、上場株式と同じように、私たちは時価で売買できます。
よって、REITで価格の上下動を狙ってトレードすることもできますし、配当狙いの投資も可能です。REITは、他の株式に比べて配当が大きい傾向があります。よって、長期保有に向いている銘柄かもしれません。
一方、ソーシャルレンディングの場合は、自由に売買できません。
特定の案件に投資しようとする場合、ソーシャルレンディング事業者が決めた期間内に投資する必要があります。また、途中で売却することはできません。満期まで保有します。この点で、売買の自由度は小さいといえます。
ただ、投資期間は半年から1年くらいのものが多いです。よって、1年くらいは使う予定がない資金で投資すれば、このデメリットは問題にならないでしょう。
また、初めから売却できないと分かっているので、「いつ売却したら得だろうか?」と心配になる必要もありません。
配当で得られる利率は、ソーシャルレンディングの方が高い傾向があります。概ね3%~10%くらいでしょうか。REITの場合は、3%~5%くらいが多いようです。
私たち投資家が取得できる情報量にも、大きな差があります。
REITの場合:
REITは、上場しています。すなわち、情報公開のレベルが高いです。REIT全体の財務諸表はもちろんのこと、どの不動産を取得しているのか、取得額はいくら、時価はいくら、入居率、テナント数、水道光熱費に至るまで公開されています。
REIT銘柄は数多くあります。よって、価格と配当利回りだけでなく、これらを詳細に分析して投資先を決めることができます。
ソーシャルレンディングの場合:
一方、ソーシャルレンディングの場合は、得られる情報が限られます。これは、法律による制限が影響しています。
資金の借主情報は、ほとんど分かりません。誰が借りているかを確定できる情報は、まず出てきません。ソーシャルレンディング事業主が提示する「ぼんやりした情報」を頼りに、投資するかどうかを決めます。
私たち投資家とすれば、誰が借りているかという情報は重要です。しかし、法律の要請で公開できません。よって、事業者がどれほど優秀か?が頼りです。
よって、自分で隅々まで調べて検討したい場合、ソーシャルレンディングは難しいかもしれません。そこまで調べなくてもいいよ、という場合は、ソーシャルレンディングの情報の少なさを許容できるでしょう。
REITの場合、売却しないで延々と保有できます。その間、配当をもらい続けます。短期売買も可能です。一方、ソーシャルレンディングの場合は、1つの案件が有効な期間は、半年から1年くらいが多いです。
よって、ソーシャルレンディングは、長期運用に向きません(できません)。
しかし、ソーシャルレンディングの投資案件は、複数あります。よって、投資資金を回収したら、別の案件に資金を再投入できます。これを繰り返すことにより、結果的に長期投資と同じような効果を得られます。
REITは、上場株式の中では年利回りが高い方です。概ね3%~5%くらいでしょう(銘柄によって異なります)。
一方、ソーシャルレンディングは、3%~10%を中心とした範囲です。明らかに、ソーシャルレンディングの方が高い数字です。
しかし、世の中の投資家全員がREITを捨てて、ソーシャルレンディングに押し寄せているわけではありません。多くの投資家が、REITに資金を投じています。
この理由ですが、今まで考察してきた諸点が影響しているでしょう。すなわち、いつでも売買できるか、情報公開の程度はどうか、です。また、次に考察する税制も、大きく影響していると予想できます。
REITの場合、上場株式と同じ税率です。すなわち、20.315%です。一方、ソーシャルレンディングの場合、雑所得として総合課税となります。総合課税ですから、給与等と合算して税金計算することになります。
下は、税率の表です(2015年以降)。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超、330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超、695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超、900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超、1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超、4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
いわゆる累進課税です。これに、住民税が10%加算されます。REITの税率が20%くらいなのに対し、ソーシャルレンディングで大きく稼ぐと、懲罰的な税金を支払う必要があります。
うっかり(?)4,000万円より多く稼ぐと、住民税と合わせた税率は55%となります。
そこで、いくら稼ぐ予定か?が、REITとソーシャルレンディングの選択で大きく影響するでしょう。実際は、ソーシャルレンディングで数千万円稼ぐ人は稀でしょうから、あまり意識しなくても良いかもしれません。
比較対象 | REIT | ソーシャルレンディング |
---|---|---|
投資対象 | 不動産 | 資金を借りたい人 |
売買の容易さ | 時価で売買(期限無し) | 投資期限・保有期限あり |
情報量 | 情報公開のレベルが高い | 限定的(法律による制限) |
投資期間 | 有効期限無し | 有効期間は概ね半年~2年 |
年利回り | 概ね3%~5% | 概ね3%~10% |
税制 | 申告分離課税(一律20.315%) | 総合課税(累進課税) |
以上をまとめて一言で書くならば、以下の通り言えるでしょう。
ソーシャルレンディングの方が、REITよりも利率が高い。ただし、情報公開や売買のしやすさは、REITの方が優れている。
ソーシャルレンディングは、情報公開等で少し劣る分、高い利率を提示しているといえそうです。
以上の通り概観しますと、ソーシャルレンディングもREITも、それぞれ魅力を持っています。そこで、REITを買うと決めた場合、どの証券会社で口座を作るのが良いでしょうか。
REITは、どの証券会社で買っても同じものを買えます。
よって、証券会社選択で最も重要なのは、売買手数料になります。同じREITを買えるのですから、手数料は安い方がいいです。
この視点で考えますと、最安水準の売買手数料で買えるのはDMM株です。下に、売買手数料(税込)を掲載します。インターネット証券大手の楽天証券の手数料と比較してみます(カッコ内は楽天証券の売買手数料です)。
DMM株と楽天証券の手数料比較表
売買額 | DMM株 | 楽天証券 |
---|---|---|
5万円以下 | 54円 | 54円 |
10万円以下 | 86円 | 97円 |
20万円以下 | 104円 | 113円 |
50万円以下 | 194円 | 270円 |
100万円以下 | 367円 | 525円 |
150万円以下 | 432円 | 628円 |
300万円以下 | 648円 | 994円 |
300万円超 | 864円 | 994円~1,050円 |
DMM株ならば、ネット証券大手の楽天証券よりも手数料が安いです。少しでも安い証券会社で売買すると有利です。
なお、ソーシャルレンディングの場合は、各事業者で独自の案件を販売しています。よって、ある事業者のソーシャルレンディング案件を、別の事業者で買うことはできません。
色々な事業者で口座を持って、案件ごとに口座を使い分けましょう。
次のページでは、ソーシャルレンディングと株式投資を比較します。