ソーシャルレンディングのデメリットと、それを緩和する方法

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ソーシャルレンディングのデメリットは何でしょうか。最大のデメリットは、「投資資金が戻ってこない可能性がある」でしょう。この原因を分類しますと、主に2つのパターンがあります。

そこで、このデメリットが実際に起きた(または、起きそうになった)事例を確認しましょう。デメリットの事例を考察すれば、どのように対処すれば良いか分かります。

資金の借り手が返済しない場合

資金の借り手は、借りたお金を使って事業をします。そして、事業の売上金を使って返済します。しかし、事業がうまくいかなければ、返済したくてもできません。

返済できなかった例をいくつか調べてみましょう。

SBIソーシャルレンディングの事例

2018年7月9日、SBIソーシャルレンディングから1つのリリースが公開されました。内容は、資金を借りた一部の人が、返済していないという内容です。

返済が滞っているファンドの一覧は、以下の通りです。

SBISL不動産バイヤーズローンファンド16号
SBISL不動産バイヤーズローンファンド17号
SBISL不動産バイヤーズローンファンド18号
SBISL不動産バイヤーズローンファンド19号
SBISL不動産バイヤーズローンファンド20号
SBISL不動産バイヤーズローンファンド21号
SBISL不動産バイヤーズローンファンド22号

このファンドから誰が借りていたか、それは分かりません。しかし、色々な情報を総合しますと、これらのファンドの返済をしていないのは、1社だけのようにみえます。

では、この事態に際し、SBIソーシャルレンディングはどのように対応するでしょうか。SBIソーシャルレンディングのホームページによると、以下の通りです。

弊社は現在、貸付債権の一括回収をはかるべく、担保不動産の競売手続等を進めることを検討しております。担保不動産はすべて東京都内に所在しており、弊社が第一順位の抵当権を設定しております。

すなわち、SBIソーシャルレンディングは、資金を貸し出すにあたり、「もし返済できなかったら、あなたが持っている不動産を売って現金化して、それで返済するからね」と条件を付けていました(抵当権の設定)。

そして、今回返済しなかった業者は、他にも大勢から借りているかもしれません。しかし、「第一順位の抵当権」を設定しています。

よって、SBIソーシャルレンディングは、貸付金額を優先的に回収できます。全部回収してもお金が残る場合に、第二順位の抵当権を持っている人が資金を回収します。

リスクに対応する方法

以上、SBIソーシャルレンディングの事例を見ますと、私たちができるリスク管理は2つだと言えそうです。

対策1:事業者1つについて、1つの案件だけに資金を投じること

「SBISL不動産バイヤーズローンファンド」は、シリーズ化されていくつもあります。しかし、同一の会社がシリーズ内の複数のファンドから資金を借りていたようです。

このため、その1社の支払いが滞ると、シリーズ化されているファンドが同時にいくつも返済不能になってしまいます。

そこで、少なくとも、シリーズ化されている投資案件については、1つの案件にだけ資金を投入することが選択肢になります。そうすれば、いくつものファンドに参加したけれど、全て返済されずに困った!という状況になりません。

さらに安全策をとるならば、ソーシャルレンディングの事業者1つについて、資金を投入する案件を1つだけに絞ります。

対策2:第一順位の抵当権

上の事例では、資金を貸すにあたり、担保不動産に第一順位の抵当権を付けていました。よって、返済が滞ったとしても、不動産を売却することで資金を回収できます。

この抵当権ですが、抵当権を付けているだけでは不十分です。第一位であることが重要です。第二位以下だと、まともに資金回収できないかもしれません。

第一位の場合、不動産の売却価格によりますが、貸付金額全額の回収を期待できます。なお、仮に資金を100%回収できるとしても、競売するには時間がかかります。任意売却になるとしても、ある程度の時間を要するのはやむを得ません。

返却されるまで、1年程度は覚悟が必要です。

クラウドクレジットの海外案件事例

次の事例を確認しましょう。クラウドクレジットは、海外案件を多数揃えています。貸出先が日本の業者であっても、返済されない可能性を考えるのは大変です。海外ならば、もっと分からないでしょう。

そこで、クラウドクレジットは、以下の表を公開しています。返済見通しを、絵で示しています(クラウドクレジットから引用)。

クラウドクレジットの返済見通し

上の絵で、利回りがマイナスになるかも?という案件3つを赤で囲みました。それ以外は、プラス成績が見込まれています。よって、全体としては優秀だと言えます。

そこで、赤枠のような案件に資金を出さないことが重要になります。

赤枠3つを並べますと、以下の通りです。

事業概要を見ますと、欧州3か国がどこなのか分かります。よって、これらの事業で貸し付けている国を調べ、その国を対象にしたファンドに参加しないことが選択肢になります。

あるいは、国ごとに大雑把に決めるのではなく、具体的な貸付対象者の平均像を確認し、その平均像以下の人に貸し付けるファンドには参加しない、という方法も使えるでしょう。

また、突発的な事象が原因で返済できないのか、恒常的な理由で返済できないのかも確認できれば、なお良いです。

例えば、稀な天災によって返済できないならば、次回、その国を対象にしたファンドに参加できるかもしれません。しかし、ジワジワと失業率や政治不安等が上昇していることが原因ならば、次のファンドに参加したくないでしょう。

このあたりの情報は、事業者の報告で確認します。事業者は可能な範囲で分析を公開しますので、読み込みましょう。

情報公開レベルが低い事業者を使わない

この記事では、2社の事例でご案内しました。これができるのは、情報公開のレベルが高いからです。情報公開のレベルが高ければ、支払いが滞った案件を確認し、それを参考にして投資行動に反映できます。

この種のマイナス情報は、ソーシャルレンディング事業者にとって、心情的に公開したくないでしょう。それでも、公開しています。

こういう会社は、信頼度が高くなります。

一方、マイナス情報について公開度合いが小さい会社の場合、情報を調べて投資行動に反映できません。すなわち、投資成績がマイナスになってしまう可能性があります。

よって、マイナス情報も公開するソーシャルレンディング事業者で取引することも、大切でしょう。

以上、資金の借り手が返済しない場合のリスクを考察しました。リスクの2つ目は、ソーシャルレンディング事業者が経営破たんする場合です。

ソーシャルレンディング事業者が経営破たんする場合

これを考察する場合、避けては通れない案件があります。経営破たんしていないものの、かなり危ない状態になったと見受けられるのが「みんなのクレジット」です。

  • 年率利回り最大14.5%を提示
  • 約45億円の資金を集めた
  • 貸付先がグループ会社に集中していた
  • あるファンドの償還資金に、別のファンドの出資金が充当された

4つ目が特にひどく、これはいわゆる「ポンジスキーム」と呼ばれる詐欺的手法の一種です。投資家への資金償還が遅れ、金融庁から行政処分を受けています。

このような事業者に資金提供すると、問題が明るみに出た際にひどい目に遭います。

これを確実に回避する方法は、おそらくありません。よって、事業者間で資金を分散して投資することが、対策になります。

可能な限り分散して投資

以上、主なリスクを2つ概観しました。残念ながら、どれだけ分析しても、将来何が起きるか、確定的に見通すことはできません(だから、利率が高いとも言えます)。そこで、投資先を可能な範囲で分散することが大切です。

そうすれば、仮にどこかで支払いが滞る案件が出ても、全体としてはプラスで推移させることが可能になります。

ソーシャルレンディングに資金を投じる理由は、稼ぐためです。しかし、見た目の収益率の高さだけに注目するのでなく、その背後にあるリスクも考察することが大切です。

次のページでは、クラウドクレジットで為替変動リスクをどの程度見込むべきかについて検討します。

ソーシャルレンディングのリスクやデメリット