ソーシャルレンディングとは-資金の貸し手と借り手の仕組み

メニュー一覧

ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)では、お金を貸し借りします。このため、トラブルを防ぐための法律が細かく整備されています。しかし、基本的な考え方は簡単です。

そこで、ソーシャルレンディングの仕組みを確認しましょう。

ソーシャルレンディングのしくみ

ソーシャルレンディングの基本的な仕組みは、以下の通りです。主な登場人物(会社)は3名です。

ソーシャルレンディングのしくみ図

投資家

資金の出し手です。資金を提供し、毎月配当をもらい、契約期間満了後には元本も戻ってくることを期待しています。しかし、資金を借りた人が返済しないと、お金を失うことになります。このため、リスクを負って投資します。

資金の借り手

事業をしたいけれど資金が十分でない、このような会社が、ソーシャルレンディングで資金調達します。契約に沿って資金を使い、返済します。資金の借り手は不動産業者だったり、個人だったり、案件ごとに異なります。

事業者

ソーシャルレンディング事業の実施者です。投資家から資金を集め、資金を必要とする人に資金を貸し出します。全体を見渡し、事故が起きないように注意を払います。よって、高度な知識と業務遂行能力を必要とします。

海外投資案件の場合

ソーシャルレンディングの中には、海外に資金を貸し出す案件もあります。この場合、事業に関係する当事者は増えることになりますが、基本的な仕組みは同じです。下の図の通りです。

海外のソーシャルレンディングのしくみ図

事業者の部分が2つに増えました。国内で事業を遂行する業者と、海外の関係会社です。このように、ソーシャルレンディングの事業内容によって当事者が増えたり減ったりしますが、基本的な仕組みを押さえておけば、理解しやすくなります。

事業者に必要な資格

上で確認した3つの当事者は、どれも重要です。1つでも欠けると、ソーシャルレンディングが成立しません。

しかし、最も重要なのは事業者でしょう。私たち投資家は、事業者から得た情報を元にして出資します。よって、事業者が頼りです。一方、お金を借りる側も、事業者と協議しながら資金を借り、ビジネスを展開するでしょう。

事業者は、高い業務遂行能力が必要です。よって、だれでも簡単に事業者になれるというわけではありません。

事業者に必要な資格は、主に2つです。

第二種金融商品取引業者の登録

ファンドを作って運用する場合、金融商品取引法で規制を受けます。そこで、第二種金融商品取引業者の登録が必要です。

(ファンドとは、複数の投資家から資金を集め、それを運用することを言います。または、集めた資金そのものをファンドと言います。)

第二種金融商品取引業者に登録する際、金融庁の検査を受けます。また、定期的に金融庁に報告書を提出します。何かあれば、金融庁から立ち入り検査を受けたり、行政処分を受けたりします。

貸金業法に基づく登録

さらに、必要とする人にお金を貸しますので、貸金業法に基づく登録もしています。

こうして、私たちは安心して事業者にお金を出すことができます。

投資家と事業者の関係

次に、私たち投資家とソーシャルレンディング事業者の関係を確認しましょう。投資家はお金を出す側、そして、事業者はお金を集めて貸す人です。単純に見えますが、お金で問題が発生すると、実にややこしいです。

そこで、法律上の関係が明確に定められています。

ソーシャルレンディング事業者は匿名組合を組織し、一般から出資を募ります。

ここで、匿名組合(とくめいくみあい)という名前が出てきました。匿名組合とは何かについて、確認しましょう。すると、ソーシャルレンディングの要点がはっきりと見えてきます。

匿名組合とは

匿名組合を少し堅く説明すると、以下の通りです。

匿名組合とは、投資家が、事業者のビジネスのために資金を出資し、そのビジネスから得られるお金から配当を得ることを約束する契約です。

もう少し、分かりやすく確認しましょう。

ソーシャルレンディングの事業者は、匿名組合を作ります。この匿名組合は、貸付案件ごとに作られます。すなわち、大手のソーシャルレンディング事業者になると、匿名組合も数多く存在することになります。

例えば、借り手が満期で資金返済し、再び同条件(借りる額、金利等の条件が同じ)で資金を借りるとしましょう。この場合も、別途、新しい匿名組合が作られます。貸出期間が異なるので、別の案件とみなされます。

そして、私たち投資家は、事業者が提供してくれる情報を見て、いいなと思った案件(匿名組合)に出資します。すなわち、お金を出します。

ここでの権利義務関係は、以下の通りです。

私たち投資家

上の4点を、ごく自然に受け入れている投資家が多いと思います。これらは、とても重要なことです。

何も意見できない

誰にいくら貸して、どのように管理して…という業務部分は、ソーシャルレンディングの事業者にお任せです。この部分でお手伝いをお願いしますと言われても、やりたくない人が多いのでは?と思います。

元本の請求権と、事業が失敗して借金を作った場合

そして、資金を出す以外に何もしないから、事業が失敗しても、自分の出資額以上の責任を負う必要はありません。

例えば、10万円出資したけれど、匿名組合の事業が失敗して借金まで作ってしまった!という場合があるとしましょう。このとき、私たち投資家は、10万円を請求する権利はあります(おそらく戻ってこないでしょうが)。そして、借金を返済する必要はありません。

組合員からの返還請求と借金については、事業者が対応します。

匿名組合員の情報

また、匿名組合に出資した人は、お互いの情報を共有しません。誰が匿名組合に出資したかという情報は、匿名組合を作った事業者だけが把握することになります。

匿名組合に参加した人の情報がお互いに分かるとしたら、ソーシャルレンディングをしたいという人は激減するでしょう。そんな情報は公開したくありません。

こうして、匿名組合は、事業者から見ても私たち投資家から見ても、使い勝手の良い仕組みになっています。

そして、投資家が出資したお金が誰かに貸し出され、無事に返済されれば、事業は終了です。匿名組合も解散します。こうして、匿名組合が作られ、事業終了とともに解散することが、繰り返し行われます。

誰がお金を借りている?

匿名組合に出資した人が誰なのか、それはソーシャルレンディング事業者にしか分かりません。また、私たち投資家が出資したお金を誰が借りているかについても、私たちは知ることができません。

お金を貸している私たちが、借りている人の情報を持てないというのは、不安があります。

ソーシャルレンディング事業者のホームページをよく読んでも、誰が借りているのか断定できません。不動産の場合は、不動産の場所が何となく分かりそうな情報を提供してもらえます。しかし、借りている人の情報は不明です。

これは、法律の運用がそのようになっているからです。ソーシャルレンディング事業者がイジワルをしているわけではありません。

ソーシャルレンディング事業者は、法律が認める範囲内で、最大限の情報を提供しようとしています。そこで、私たちは、事業者の情報をよく読んで、投資するかどうか決定します。

すなわち、事業者が優秀でなければなりません。私たちの投資行動の成否は、事業者の能力に大きく依存しているといえそうです。

以上、ここまでは、4種類のクラウドファンディングについて説明してきました。次ページ以降は、ソーシャルレンディングのリスクやデメリットと、それを緩和する方法について考察していきます。

クラウドファンディングの種類